り〜ん  り〜ん  り〜ん







優しい鈴の音が響きだす。

その音に誘われるように少年は目を閉じると輝きだした。

ゆっくりと宙に浮き上がる少年。

周りを見渡すと、先程まで一緒に遊んでいた子供達がぽかんとした表情でそれを見守っていた。

そして少年は薄っすらと眼を開けると皆を見下ろす。



「楽しかったありがとう!また遊ぼうね。」



少年はにっこりと笑顔で言うとすうっと霞のように消えてしまった。

後に残ったのはキラキラと光る少年の消えた軌跡だけ。

その美しい光に子供達は見とれていた。



そして――少年が消えた途端、景色が急に変わり気がつくと交差点のある林の中に戻っていたのだった。



狐につままれたような表情で辺りを見回す子供達。



「やったね北斗ちゃん。」



一部始終を黙って見ていた猛が北斗に近づき声をかけてきた。



「・・・・・・」



「北斗ちゃん?」



猛はぼんやりしている北斗を怪訝そうに見おろす。



「た、猛さん!な、なんですか?」



ゆっくりと顔を覗き込んでくる猛に気づき、はっと我に返った北斗は慌てて聞き返してきた。

そんな北斗を猛は不思議そうに見ていたが、ややあってにっこりと笑顔になるとこう言ってきた。



「いや〜ぼんやりしてる君も可愛いなって♪」



「な、何言ってるんですか?」



茶化す猛に北斗は顔を真っ赤にさせて下を向いてしまった。。

そんな北斗を見て猛はますます嬉しそうだ。

「はははは〜ごめんごめん、でも本当だからね。」といつものセクハラ発言を披露しながら更に距離を縮めて――



「さて、帰るぞ。」



「いたたたたた〜〜〜」



ドスの効いた声が降って来たかと思った瞬間悲鳴が上がった。

見ると至近距離で北斗を困らせる猛の側に、いつの間にか来ていた兇が猛の耳をこれでもかと言うほど引っ張っていた。



「那々瀬さん大丈夫?」



ぽかんと見上げる北斗を心配そうに見おろす兇。

兇の言葉に顔を真っ赤にさせたままの北斗は猛の耳を心配しながら素直に頷いた。



「う、うん・・・大丈夫。」



何でもないように笑ってみせる北斗に兇はにこりと天使の笑顔を向ける。

そして、徐に猛の耳を開放した兇は、痛そうに耳を擦りながら復活した兄に子供達を保護してもらうよう警察へ連絡するよう伝えた。

そんな兇に猛は不平たらたら、ぶちぶち文句を呟きながら警察へと連絡する。

暫くしてパトカーが交差点へと到着した。

猛と兇は到着した警察官へ事情を説明している。

説明が終わるまでぼんやりと待っていた北斗の元へ、男の子が近づいて来た。

あの幽霊の少年に”こうた君”と呼ばれていた子だ。

男の子は北斗の隣に立つとぽつりとこう聞いてきた。



「あの消えちゃった子、なんで僕のお父さんの名前知ってたんだろう・・・」



男の子の洩らした言葉に北斗は思わず男の子の顔をまじまじと見た。



――それはつまり・・・・・



「なるほど、あの少年の友達だったって言ってた子の子供だったんだねぇ〜」



「ま、20年以上も前の話だからね」と、いつの間にか警察との話が終わった猛が側へと来ていた。

猛はそう言いながら納得したようにうんうんと頷いている。

北斗もまた猛の呟いた真実に驚いていた。



ふと黄泉へと昇っていった少年を思い出す。

あの池で亡くなって寂しさのあまり子供達を神隠しに遭わせてしまった少年。

そこまで考えて北斗の脳裏に何かがフラッシュバックした。

頭に浮かんできた映像に固まる北斗。

目を見開き瞳を揺らしながらぽつりと呟くのだった。



「わたし・・・・前にも神隠しに遭った事がある。」



と――







第三章完

第四章へ続く

≪back NOVEL TOP next≫