放課後いつものように若菜と不動産屋巡りをしていた時、ふと携帯が気になったのがいけなかった。
何気に着信履歴を見ていたら、あったのだ―――留守録が。
授業中にかかってきた友達からの伝言だろうと警戒心も持たず聞いてしまったのがいけなかった。
その伝言には―――持ち主を凍り付かせるほどの内容が録音されていたのだった。
「で、どうするのよ?」
「ど、どうするもこうするも会うっきゃないでしょぉ〜。」
北斗は携帯を握り締め涙ながらに答えた。
そんな北斗を見ながら若菜は嘆息する。
「もう、しょうがないわねぇ!こうなったら相談よ!」
「え、だ、誰に?」
「決まってるでしょ!」
若菜はウインクをしながら困惑する北斗の腕を掴むと、ある場所へと連れて行った。
「えっと、つまり・・・那々瀬さんの。」
「ええ、おじ様が3日後にこっちに帰ってくるのよ。」
「事件の事は?」
「し、知ってる。実はその事で相談が・・・」
北斗はそう言いながらぽつぽつと説明し始めた。
ここは鈴宮家の一室。
あの後、若菜は北斗を連れて鈴宮家の門の前に来ていた。
そこへ丁度居合わせた兇に相談があるからと言って客間に通してもったのだ。
そして先ほどの相談とはこうだ。
事件の後、海外転勤中の父親には『家が火事にあい全焼したため今は若菜のうちで世話になっている』と説明しておいたのだが、それが嘘だったとばれてしまった。
こともあろうに北斗の父親が若菜の家にお礼の電話をかけてしまったらしい。
当然若菜の両親は北斗たちの嘘など知らず、本当の事を話してしまったのだ。
もちろん、現在お世話になっている場所のことである。
事実を知った北斗の父親は慌てて北斗の携帯に電話してきたと言うわけなのだが。
「それで、その・・・お、お父さんが挨拶に来たいって言ってて・・・」
携帯の留守電には3日後日本に帰国するからその時、今お世話になっている方々にきちんと挨拶がしたいという父の声が録音されていた。
留守電の父の声はどこか硬かった、たぶん怒っているのだろう。
そう思うとなんとも居た堪れない気持ちになった。
鈴宮君の家に来て父は何を言うのか?もちろん挨拶をするのだろうけど、一緒に住んでいるのが同い年の男の子で、しかも同じ学校のクラスメートだと知ったら父はどう思うのか?
―――変に勘ぐられたりしなきゃいいんだけど・・・。
年頃の娘を持つ父親は娘の男女交友に厳しいと聞く。
北斗の場合は高校入学を境に父親と離れて暮らしていたのでこういった話題はした事がなかったので良くわからない。
―――中学の時ってどうだたっけ?
父親の面影を思い出しながら過去の思い出を掘り出してみるが、緊張と動揺の為かうまく思い出せずにいた。
「と言うわけだから那々瀬さん。聞いてたかい?」
昔の思い出に没頭していると突然兇から声をかけられ慌てて顔を上げた。
「もう、何ぼーっとしてたの?ちゃんと話し聞いてた?」
若菜も眉間に皺を寄せながら北斗の顔を覗き込んでくる。
「あ、ご、ごめん。なんだかぼーっとしちゃって。で、何?」
北斗の言葉に二人は困った顔をしながらお互い顔を見合わせていた。
「え〜っと、とりあえず3日後那々瀬さんのお父さんにはちゃんと本当の事を話そうと思ってる。それで、きちんと話をしてこのまま家にいられるよう頼んでみるよ。」
「で、でももしそれでダメだったら?」
「大丈夫だよ。」
北斗の心配をよそに兇は朗らかに笑っていた。
「で、でも・・・」
「まあ、鈴宮君の家がダメなら私の家もあるんだから心配しないで。」
むしろそっちの方が私としては嬉しいんだけどね、とウインクをしながら若菜が肩を叩いてきた。
北斗はそんな二人を交互に見てただ頷くしかなかった。
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