本来の姿を取り戻した少女の霊は暫くの間、北斗の腕の中で泣き続けていた。
「大丈夫だよ。」
北斗の言葉に少女が驚いた顔で見上げる。
「大丈夫まだ間に合うよきっと。」
涙でぐしゃぐしゃになった少女の顔を北斗は見下ろしながら、にっこりと微笑んでみせた。
「う・・・そ、できない、そんなこと・・・」
くしゃりと顔を歪ませながら首を振る少女はまた色を失い始める。
「できるよ!」
そんな少女に北斗はぴしゃりと強い口調で言い切ると
「そうだよね?」
と言いながら背後の人物に視線を送る。
「ああ、大丈夫だ。」
北斗の視線の先――意識の戻った兇が力強く頷いていた。
兇は北斗の傍まで近づくと、少女の肩に優しく手を置く。
「大丈夫、俺が君を導いてあげるから。」
だから安心して旅立つんだ。
隣で微笑む兇を少女は見上げ、その眼差しに力強い意思を見つけると、こくりと頷いた。
それを見た北斗は「お願い」と兇に少女を託し離れていった。
北斗が離れたのを確認した兇は、少女と対峙するように向き直りゆっくりと少女の頭に右手をかざした。
少女の頭上、兇の右手首から淡い光が輝きだす。
見るとその光は手首に嵌められた数珠の様な物から生まれていた。
光は突然パンとはじけたかと思うと、小さな球体になって辺りに散らばり、どこからともなく美しい鈴の音が聴こえて来た。
よく見ると数珠だと思っていたその光の玉は小さな鈴の形をしており音はそこから聴こえて来ていた。
ちりーん、ちりーんと澄んだ音色が辺りに響き渡り凝った闇を振り払っていく。
少女の背後にあった霊達が光に包まれ空へと昇って行く。
それに習うかのように少女の体も光に包まれ始めた。
ふわり、と少女の姿が霞みのように薄れると、ふと少女が視線を彷徨わせる。
ぴたりと止まった視線は北斗を捉えていた。
『ありがとう』
少女はそう一言呟くと微笑みながら光の軌跡を残してすうっと空へと消えていった。
「きっときっと幸せになって!」
どうかどうか、と両手を握り締め北斗は消えていった少女に向けて何度も祈るように叫ぶ。
少女の残した光の粒が北斗に降り注ぐようにきらきらと輝いていた。
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