次の日の放課後――



「どうしたものかしら・・・・。」



盛大に溜息を吐く女生徒と申し訳なさそうに肩を落とす女生徒。

片方は脚本担当の女生徒と、もう片方はヒロイン役の北斗であった。

今日も北斗は台詞を間違え怒られていた。

ヒロインといっても台詞は殆ど無くあっても簡単なものばかりだ。

でも何故か北斗は覚えられないでいた。

それというのも連日見る夢のせいなのだ。

あの事件の後から毎晩見る夢に北斗は困っていた。

夢を見た後はそのことが頭から離れず、しかも断片的な夢は思い出そうとすると頭痛を伴った。

その夢は過去の記憶ともいえるような夢で北斗は気になって仕方がない。

そのお陰で劇の台詞がまったく頭に入ってこないのだ。

その事に北斗は焦り劇の練習中何度も失敗を繰り返す始末。



とうとう業を煮やした脚本担当の女生徒が出した結論は――北斗の特訓だった。



「そんなんじゃヒロインは任せられないわ!特訓してどうしても駄目なら那々瀬さんには悪いけどヒロイン役は降りてもらうわよ。」



脚本担当の女生徒の言葉に周りにいた他の女生徒達が目の色を変えてこちらを振り返っていた。



――那々瀬さんが降ろされれば私達にもチャンスが!!



教室内は一瞬で色めきたつ。

といっても皆心の中でヒロインの座を虎視眈々と狙い始めただけなので実際には教室内の雰囲気は変わっていない。

しかし大半の女生徒たちのギラギラした視線を一身に受ける北斗は内心冷や汗を流しながら焦っていた。



――そ、そんなことになったら兇君と一緒にお芝居できない・・・・。



実は自分がヒロインに選ばれてから兇との共演を楽しみにしていたのだ。

選ばれたときはびっくりしたのだが、後から喜んでいる自分に気づいた。

なんだかんだで兇とは良い雰囲気になってはいるのだが、そこはそれ兇の圧倒的な人気もあるせいで堂々と仲良く振舞う事などできないのも事実。

その為、北斗はこっそりと今回の劇を楽しみにしていたのだった。

北斗はなんとしてでもヒロインの座を降りたくは無かった。



北斗はキッと脚本担当の女性を睨みつけるように見上げると「がんばります。」と意気込みの返事を返す。

そして、北斗の特訓が始まったのだった。



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