「も〜〜、兇君と一緒に歩きたかったのに〜〜!」
なんであんたと!と頬を膨らませながら今日の主催者 ――― 光一 ――― の顔を睨む数名の女子達。
睨まれた光一は「ははは」と引きつった笑顔を見せながらこめかみに青筋を立てて詰め寄る女子達をなだめていた。
兇達が『お化け屋敷』に入った後、どこをどう進んだのかあっという間に出てきてしまったクラスの女の子達は、兇と北斗がいないことに気付き腹を立てていた。
それもそのはず、女子のほとんどは光一の「きょう一日、兇とデートができるよ〜」という甘い言葉に誘われて喜んで来ていたのだ。
二人きりになるどころかライバルが何人もいるわ、当の本人はいつの間にかいなくなっているわで女の子達の不機嫌は最高潮を迎えていた。
そんな怒り100%の乙女達を前に、さすがの光一も顔面蒼白になり額にはだらだらと滝のような汗が流れていた。
「ねえ、もしかしてこれがあんたの目的?」
そんな光一の耳元でそっと囁いたのは北斗の親友 ――― 青柳 若菜 ――― だった
「えっと、まあ・・・ははは〜」
バツの悪そうな表情で頬をぽりぽりと掻きながら言葉に詰まる光一をジト目で見たあと若菜は小さくため息を吐いた。
「ごめ〜ん、そう言えば北斗、具合が悪いから先帰るってさっきメールあったんだ〜。」
突然若菜は顔の前で手の平を合わせクラスの女の子達に謝りだした。
へ?と呆けている光一のわき腹を肘で小突くと、若菜は光一に目配せをする。
それを見た光一は慌ててみんなに謝罪しはじめた。
「あ、そうだったそうだった!那々瀬の奴が急に具合悪くなったみたいで兇が送ってくって俺にもメールが来てたんだ〜〜あはは〜忘れてたわ〜〜。」
「なんですって〜〜〜!!」
「ちょっとどういう事よ!」
「聞いてないわよそんな話!!」
光一の言葉を聞いた女の子達は一斉に光一へと詰め寄る。
喧々囂々、女の子達から非難の声を浴びせられる光一。
そんな光景を横目で見ながら若菜は心配そうに呟くのであった。
「ほんと、どこ行っちゃったんだろあの二人」
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