しくしくしくしく・・・・・
もうかれこれ30分程そこで座り込み泣いている人影があった。
ぼんやりと浮かぶその輪郭は、この場所では更に不気味で恐怖を引き立てる。
辺りには誰の気配も無く、ただ暗い廊下と壁に沿って並ぶ真っ暗な教室が見えるだけだった。
泣いている人物は、ふと気配を感じて顔を上げると遠くの方で人影が見えた。
目を凝らして見ると、数人の人影が何やら忙しなく動いている。
辺りを片付けているようだ。
―――よかった〜人がいたよ〜〜
嬉しさのあまり顔がふにゃっと崩れた。
しかし、その直後その人物は凍りついてしまった。
「て、手が・・・」
ガタガタと震えだし、目の前のモノに釘付けになる。
視線の向こうでは ー――先程見えた人影が――ー こちらに気づき手招きしているのだ。
しかも、その手は薄っすらと透けて後ろにある壁が見えている。
「ひっ」
声を出そうとするが、喉がかすれて声にならない、そしてまた目に涙を浮かべて座り込んでしまった。
声を殺して泣きじゃくるその人物の肩に、音も無く背後から手が置かれた。
「☆▲&◇%!■!!」
声にならない声をあげながら5メートルほど飛び退る。
ガタガタと震えながらも恐る恐る目を開けて振り返るとそこには―――
懐中電灯を持った青年がポカンと口を開けたままその場に立ち尽くしていた。
「あ、あ、あ、あ・・・・・」
「 ? 」
「うわ〜〜ん、人がいたよ〜〜〜!!」
「のわぁっ!!」
泣いていた人物は突然現れた生身の人間に喜び、我を忘れて抱き付いてきた。
驚いたのは抱き付かれた方で、妙な声を上げながら抱きつかれた反動で後ろによろめいたが、しっかりと相手を支えていた。
自分の服を濡らしながら泣きじゃくる相手を見下ろし、肩を落としながら溜息をついた青年は一言。
「何やってんだ、こんな所で」
呆れ顔で声をかけた。
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