「それで、あそこで泣いてたわけだ」
「うん」
暗い廊下を懐中電灯の明かりを頼りに、歩く二人の人物がいた。
一人は色素の薄い髪と瞳を持ち、すらりとした体格の長身の青年と。
もう一人は、黒髪に黒い瞳のどこにでも居る風貌の小柄な少女だった。
少女といっても歳は青年と同じである、しかしその低い身長のせいか随分幼く見えてしまうのだ。
「私ってホントこういうの駄目なんだよね〜」
意外な言葉に青年は思わず少女を見下ろした。
この少女 ―――実は自分が通う学校のクラスメート――― は『元気だけが取り得』という言わばどこにでもいる女の子なわけなのだが。
―――クラスで見た限りじゃ、こういうの怖いってイメージは無かったんだけどなぁ〜
ちらりと隣の少女を盗み見る。
少々男勝りな性格の彼女は、まだ何かぶつぶつ一人で呟いていた。
元気が取り得なだけあって立ち直りも早い。
―――やっぱ、見えないなぁ・・・・
心の中で呟き苦笑を漏らす。
「でも、さっきは驚いちゃった、いっぱい人がいたかと思ったら、私のこと呼んでて、し、しかも手が透けてたんだよ!」
振り向きながらそう言ってくる少女の顔は心なしか青ざめていた。
「でも・・・・そんな事あるわけ無いか〜やっぱ見間違いだよね〜♪」
たはは、と片手を頭に当てながら笑い飛ばす。
「ああ、アレねただの自縛霊だよ」
「えっ」
あっさりと青年にそんな事を言われ、その瞬間少女の顔が強張った。
「えっ、えっ、まさか鈴宮君て・・・・視えるの?」
「え、まあ多少はね」
鈴宮と呼ばれた青年はそう言いながら肩を竦めてみせた。
鈴宮 兇 ―――それが彼の名前だ。
「えっ、那々瀬さんどうしたの?」
目の前の少女の異変に、思わずぎょっとする。
那々瀬と呼ばれた少女は、固まっていた表情を次第に崩していった。。
そしてついに、彼女 ―――那々瀬 北斗――― はぽろぽろと涙をこぼし出し・・・・・
「うそ!うそ〜〜!!いやぁぁぁぁっ!私祟られちゃうよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
と、大絶叫していた。
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