「おねえちゃん、おいしい?」
「え?う、うん!」
薄暗い林の中、小さな少年の声と歳若い女性の声が響いてきた。
北斗は夢中でみかんを頬張っていた為、少年の声に幾分か遅れて返事を返す。
そんな北斗を少年はおかしそうに見て笑った。
「おねえちゃんいっぱい食べて!みかんならまだまだたくさんあるから。」
「あ、ありがとう。でもおねえちゃんもうお腹いっぱい。」
少年の屈託の無い笑みに北斗も自然と笑顔になりながら頷くと、きつくなってきたお腹を見おろしながらそう答えた。
「それに、あんまり食べ過ぎるとお腹壊しちゃうしね。」
北斗は少年の顔を覗き込みながらそう言うと、ちろっと舌を出して照れ笑いをしてみせる。
そんな北斗に少年もつられて笑った。
「おねえちゃんおもしろ〜い。」
くすくすと笑う少年に自然と顔が綻ぶ。
「あ、そうだ。そういえば君どうしてこんな所にいたの?」
お腹も一杯になり少し余裕の出てきた北斗は、ふと疑問に思ったことを問いかけてみた。
「僕のこと?えっとね〜僕この近くに住んでるんだ!でね、いつもここに遊びに来てるの!」
少年は屈託の無い笑顔をすると北斗にそう答えた。
「へえ〜、いつもここで遊んでるの?」
少年の笑顔に安心しきった北斗は尚も問いかける。
「うん、この前はこうた君とここでかくれんぼして遊んだんだよ!でもね・・・・」
うんうんと話を聞いていると急に少年はしょんぼりしだした。
「どうしたの?」
怪訝に思い北斗が聞いてみる。
すると少年はぽつりと言ってきた。
「うん、でも・・・・この前かくれんぼしてからみんなが全然遊んでくれなくなっちゃったんだ。」
「どうしてかな〜?」と俯きながら言う少年に北斗は居た堪れなくなった。
「ねぇ、おねえちゃん、みんな僕の事嫌いになっちゃったのかな〜?」
「そ、そんな事ないよ!きっとみんなそのうち遊びに来るよ!」
そう言って見上げてくる少年を北斗は何とか励まそうとうそぶく。
「そうだよね!みんなそのうちまた来るよね!」
北斗の言葉に少年はぱぁっと顔を明るくすると可愛らしく頷いて見せた。
そんな可愛らしい少年のしぐさに北斗の顔はまた綻ぶ。
――可愛いなぁ〜こんな弟か妹が欲しかったなぁ〜。
一人っ子の北斗は内心でささやかな夢を呟くと、このお姉さん気分を満喫するべく口を開いた。
「そうだ!お友達が来るまでおねえちゃんと遊んでようよ!」
北斗の言葉を聞いて少年の顔が更に明るくなった。
「ほんとう!?いいの?」
「うん、いいよ、いいよ!何して遊ぶ?」
「じゃあ・・・・かくれんぼ!」
「おっけ〜わかったじゃあ私が鬼になるから隠れてね。」
「あ、待っておねえちゃん。」
話がまとまり北斗が数を数えようとすると少年が慌てて止めに入った。
「どうしたの?」
北斗は顔を上げて訝しげに首を傾げる。
「うん、せっかくだからみんなも呼ぼうと思って。いっぱいいたほうが楽しいでしょ?」
少年はそう言うと立ち上がり走って行ってしまった。
「え?みんなって?」
確か先ほど遊ぶ相手がいないと言っていたはず・・・・。
北斗は不思議に思いながら少年を追いかけた。
少年が走って行った先はあのお堂だった。
北斗は困惑しながら少年の後をついていく。
木戸を開け少年に続いて中に入る。
「!!!!!」
先ほどまで誰もいなかったはずのそこには――
小さくなって蹲る子供達の姿があった。
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