「え?猛・・・・さん?」



北斗は思わずそう尋ねてしまった。

着物の男性の顔が猛にそっくりだったからだ。

いや、よく見ると兇にも似ている。



「おや?貴女が最近うちへいらしているというお嬢さんですね。」



どことなく二人に似た男性に北斗が困惑していると、その男性がにこりと菩薩のような笑顔で尋ねてきた。

その言葉に北斗がさらに困惑していると背後から声が聞こえてきた。







「お久し振りです・・・・・・父さん。」







背後にはいつの間に来たのか兇が立っていた。

しかも何故か顔は無表情だ。



「へ?」



突然背後に来ていた兇にも驚いたが、何よりも兇から発せられた言葉に北斗は驚いていた。



――え?え?父さんって・・・・オトウサン??



北斗は玄関に立つ着物の男性をまじまじと見た。



短く切り揃えられた色素の薄い髪。

渋めの色の着物にお揃いの色の羽織を着た男性の面影は兇にも猛にも似ていた。

そして落ち着いた雰囲気はあるのだがどことなく威厳を感じる佇まい。



北斗が呆けているとまた背後から声が聞こえてきた。



「あらあら、お早いご到着でしたわね。おかえりなさい保さん。」



凛と澄んだ声を響かせて現れたのは清音だった。

清音は嬉しそうに着物男の帰宅を喜んでいる様だった。



「ただいま清音さん。私が居ない間家の事で変わりは無かったですか?」



「ええ特には・・・・でも猛さんが・・・・。」



清音はそう言って表情を曇らせてしまった。



「猛の事は聞いているよ。大変だったね。」



保と呼ばれた兇達の父親はそう言うと清音の肩に優しく手を乗せてきた。



「あなた・・・・。」



見詰め合う夫婦。

そんな二人をどきどきと見守っていると、北斗と兇の視線に気がついたのか清音が慌てて保から離れた。



「こ、こんな所で立ち話もなんですわね。朝食の用意もできてますから話は食事をしながらしましょう。」



清音はそう言って促すと恥ずかしそうに奥へと引っ込んでしまった。



「やあ、久し振りの清音さんの手料理か楽しみだなぁ。さあ、二人とも行きましょうか。」



保は嬉しそうに言いながら玄関を上がると北斗と兇を連れて食事の間へと向かうのだった。











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